横浜でもっとも古い洋風建築物「旧横浜居留地48番館」

横浜の街並みといえば、異国情緒あふれる雰囲気が特徴です。

日本大通りには、歴史的な洋風建築物が多く現存しています。その中でもっとも古いのが、「旧横浜居留地48番館」です。今回は、日本大通り駅近くにある、この建物の歴史に迫ります。

往時をしのばせる、歴史的遺構

みなとみらい線日本大通りから徒歩4分。KAAT神奈川芸術劇場の裏手、ハイアットリージェンシー横浜の向かい側にあるのが「旧横浜居留地48番館」です。

歩いていると見逃してしまいそうな佇まいですが、横浜最古の洋風建築物の遺構という、貴重な歴史スポットなのです。

「居留地」とは、かつての日本で、外国人の居住や事業スペースとして指定された地域のことをいいます。日本では横浜のほか、築地(東京都)、川口(大阪府)、神戸(兵庫県)などに居留地が設けられました。

横浜の居留地は、今の関内、日本大通り、山下町、山手地区あたりにあり、1899年に廃止されました。

旧横浜居留地48番館は、今から140年前の1883(明治16)年に建てられました。紅茶やダイナマイトなどの取引を行っていた商人J・P・モリソンの事務所兼住宅として用いられていたそうです。

元々はもっと大きな建物だったようですが、1923(大正12)年の関東大震災によって2階部分が壊れてしまったとのこと。さらに、その後の復興事業による道路整備で、建物の一部がなくなることになりました。

入口の上にあるのは、創建時に付けられたと思われるキーストーンがあります。

1926(大正15)年から1978(昭和53)年までは、ドイツ籍のヘルム兄弟商会によって、外国人向けアパート「ヘルムハウス」として使われたり、県警の倉庫として用いられていた時代もありました。

旧ヘルムハウスが解体される時の調査で、この建物の価値が認められ、2001(平成13)年に神奈川県の指定重要文化財となり、保存工事がなされました。

「フランス積み」と呼ばれる煉瓦の積み方が特徴

旧横浜居留地48番館の特徴は、同じ段に煉瓦の小口面と長手面が交互に現れる「フランス積み」といわれる手法が使われていたことです。案内板の台座も、この建物で使用されていたフランス積みの煉瓦でできています。

現在の旧横浜居留地48番館は、ガラス越しに、フランス積みの煉瓦の壁と、中に残っているものの様子を垣間見ることができます。

こちらの写真は、屋根を支える骨組みです。「小屋組トラス」と呼ばれる骨組みで、関東大震災後の改修時のものだそうです。2001(平成13)年に保存工事がされるまで使われ続けていたとのこと。長い間、この建物を支え続けてくれた骨組みなのですね。

日本大通りで、洋風建築めぐりを

旧横浜居留地48番館がある日本大通りには、他にも西洋建築が多く残っています。

今は、イチョウ並木が美しい日本大通り。その歴史は古く、1866(慶応2)年に横浜の居留地で起きた大火事がきっかけで、英国人技師のリチャード・ヘンリー・ブラントンが設計して1870(明治3)年につくられた、日本初の西洋式街路なのです。

日本大通りを散歩しながら、洋風建築を見てまわるのもおすすめ。現存する建物のうち、いくつかをご紹介します。

横浜情報文化センター(旧横浜商工奨励館)

(出典:横浜企業経営支援財団公式ホームページ)

日本大通り沿いでひときわ大きな建物が、横浜情報文化センターです。クラシックなスタイルに、アールデコ調の意匠が加わった、横浜らしい西洋風の建物になっています。

こちらは関東大震災後の復興事業として1929(昭和4)年に建てられ、その後、2000(平成12)年に増築されて、現在の姿になりました。

神奈川県庁本庁舎

(出典:神奈川県庁公式ホームページ)

国指定重要文化財となっている神奈川県庁本庁舎は、1928(昭和3)年、関東大震災で焼けた県庁本庁舎に代わって建てられました。高い塔があることから、「キングの塔」という愛称をもちます。

アール・デコ風の装飾が特徴的ながら、内装は和風になっており、和洋折衷の意匠になっています。現役の庁舎としては、大阪府庁本館に次いで、全国で2番目に古い建物だそうです。

旧神奈川労働基準局(元日本綿花横浜支店倉庫)

(出典:横浜市公式ホームページ)

風情あるこちらの建物は、1928(昭和3)に建設され、日本綿花という会社(現在の双日)の倉庫として使われていました。「スクラッチタイル」と呼ばれる、表面に溝が彫られた外壁が特徴です。入口まわりのレリーフにも、西洋の歴史を感じられます。

現在はなんと、その一部が横浜DeNAベイスターズが運営する複合施設「THE BAYS(ザ・ベイス)」として使われているんです。

1階は野球にまつわる雑貨や洋服のお店、そしてベイスターズオリジナル醸造ビールが楽しめるクラフトビアダイニングが入居。2階に上がると、会員制シェアオフィス&コワーキングスペースがあるという、なんとも現代的な施設になっています。

建物を大切にしながら、時代の変化とともに使い方を変えていっているのですね。

日本大通り付近は、横浜ならではの異国情緒あふれるエリアです。近くに行った際は、旧横浜居留地48番館をはじめとする、歴史的な洋風建築も見てみてくださいね。

【スポット情報】
旧横浜居留地48番館
住所: 横浜市中区山下町54

この記事を書いた人

  ライター名  御代 貴子
プロフィール 横浜に何かと縁があるフリーライター。幼少期の夏休みは横浜の親戚の家で過ごし、大学生活も横浜で送る。現在も神奈川県在住。東北の港町で育ったせいか、海辺の街並みが好き。趣味は飲酒しながらの料理。