浅間神社(せんげんじんじゃ)は、横浜市西区の小高い丘の上にあります。創建から900年以上の長い歴史を持ち、ずっと横浜を見守ってきました。産業振興・家内安全・安全子育・学業成就といったご利益がある神社です。
今回は、浅間神社にまつわる歴史や、例大祭というお祭りについてご紹介します。買い物や食事で横浜駅周辺に行った際は、散歩がてら浅間神社へも足を伸ばしてみるのはいかがですか?
1080年に源頼朝が創建したとされる神社
浅間神社は、横浜が開港するはるか昔から、横浜市西区浅間町の鎮守として、ずっとこの地を見守ってきた神社です。
この浅間町、かつては芝生村(しぼうむら)という地名だったそうです。ところが「死亡」と同じ読み方で縁起が悪いとのことから、神社の名前をとって浅間町と改名されたとのこと。縁起を担ぐことを大切にしていたのですね。
浅間神社は、旧東海道から急な階段の参道を上った丘の上にあります。横浜駅方面からは、旧東海道の保育園脇の階段を上るのが近道です。横浜駅からは徒歩で15分弱。晴れた日の散歩にちょうどいい距離ですし、駅からバスで行くこともできます。バスの場合は、横浜駅西口から横浜市営バス、相鉄バス、神奈川中央交通のいずれかに乗って浅間下バス停で降り、そこから歩いて3分ほどで到着です。
1080年に源頼朝の勧請によって創建されたと言われていますが、社殿は関東大震災や戦災で焼失し、現在のものは戦後再建したものとなっています。
本殿は浅間造(せんげんづくり)という、神社では特殊な建築様式とのこと。社殿の上にさらに別の社殿がある二階建てになっています。浅間造の神社は、日本ではここ浅間神社を含む4社のみだそうです。その4社には、全国に1,300社ほどある「浅間神社」の総本社にあたる富士山本宮浅間神社も含まれるので、とても貴重ですね。地元の皆さんにとっては、誇らしい気持ちにもなるのではないでしょうか。
浅間神社にはこの本殿のほか、小嶽社、稲荷社、招魂社の3つの境内社(けいだいしゃ。本殿のほかに祀られている社)もあります。
こちらは稲荷社の境内です。
ビルや住宅を背景に、鳥居の朱色が映えます。都会にたたずむ神社ならではの風景ですね。街の騒がしさが嘘のように、静かで落ち着いた時間を過ごせそうです。御朱印をいただくこともできるので、お出かけの記念になりますね。
横浜を開拓した有力者が葬られたエリア
このエリアには横穴古墳が群生しており、神社の境内にも10か所近くの古墳があるそうです。この古墳は富士山に通じていると言われていたことから「富士の人穴(ひとあな)」と呼ばれ、かつては東海道を行き交う人々の見物スポットになっていたとのことです。
また、須恵器(すえき)という土器の瓶や平瓶が出土していることからも、このあたりを開いた有力者が葬られた地と言われています。とても由緒ある土地なんですね。
かつては浅間神社近くに海の波打ち際がありました。ここにあった袖ヶ浦と呼ばれる入江は、米や薪炭などを運ぶための中継地点として栄えたそうです。この入江に繋がっている川が、今も横浜駅周辺を流れる帷子川(かたびらがわ)です。
そして神社の本殿がある丘は、袖すり山と呼ばれていたとのこと。浅間神社の境内には、こうした歴史を説明する案内板もあるので、歴史を学びながら参拝するのもよさそうです。
今は、このエリアには商業施設やマンション・住宅が多く並んでいます。昔からずっと、人でにぎわう場所だったんですね。お正月は、このエリアに住む人たちの初詣スポットになっているそうです。
また、神社の敷地内には浅間幼育園(認可保育園)もあり、子供たちのにぎやかな声が聞こえてきます。この浅間幼育園は、昭和24年に設立された歴史ある保育園です。1〜5歳児が通い、年長クラスでは剣道も行うことが特色です。
保育園のすぐ脇にも、神社の参道への入口があります。
毎年にぎわう例大祭
浅間神社では、毎年6月1日に例大祭が行われます。例大祭とは、1年に1回、その神社で定められた日に行われる最も重要な祭祀です。例大祭が行われる前後の日程にあたる6月1週目の土曜日・日曜日には、神社近くの道沿いに数百件もの露店がずらりと並び、神輿も街に繰り出して大にぎわいになります。道路も一部通行止めにして神輿を通すので、街の人にとっては一大行事ですね。
2022年の例大祭は、新型コロナウイルス感染症の流行があり、残念ながら中止になってしまったそうですが、また次回以降の例大祭を楽しみに待ちましょう。
なお、故・黒澤明監督のデビュー作となる映画『姿三四郎』(1943年公開)では、浅間神社の石段でロケも行われたそうです。映画やドラマのロケ地巡りが流行っていますので、黒澤ファンの方々も多く訪れているかもしれませんね。
浅間神社は小高い丘の上にあるので、階段を上るのがちょっと大変かもしれませんが、境内から横浜の街を一望すれば気分も爽快!晴れた日には、みなとみらいのランドマークタワーも見渡せるようです。ぜひ足を運んでみてください。
【スポット情報】
浅間神社
住所:横浜市西区浅間町1-19-10
ライター名 御代 貴子
プロフィール 横浜に何かと縁があるフリーライター。幼少期の夏休みは横浜の親戚の家で過ごし、大学生活も横浜で送る。現在も神奈川県在住。東北の港町で育ったせいか、海辺の街並みが好き。趣味は飲酒しながらの料理。