横浜の玄関口となっている横浜駅。6路線が乗り入れ、1日230万人が利用するほどの巨大な駅です。
今の横浜駅は、実は移転を繰り返した後に建てられた「三代目」なんです。その前身となる「二代目」横浜駅は違う場所にあり、今も遺構が残されています。今回は、横浜駅の歴史を紐解きながら、二代目横浜駅についてご紹介します。
二代目横浜駅があったのは、今の「高島町駅」あたり
横浜駅は、2度の移転を経て今の場所にあります。初代横浜駅は、今の桜木町駅あたり。そして二代目は、今の横浜市営地下鉄ブルーライン高島町駅近くにありました。
二代目横浜駅は、1915(大正4)年8月15日に開業。その少し前に東海道線が横浜駅から小田原駅まで延伸する際、当時の初代横浜駅から小田原方面へは電車をスイッチバックせざるを得ませんでした。その不便を解消するために別の「平沼駅」ができ、東海道線が横浜駅を通過するようになってしまったんです。
東海道線を横浜駅にも停車させ、横浜の玄関口を復活させるために建てられたのが、二代目横浜駅というわけです。
横浜の発展を賭けて建てられた駅は、駅舎もとても立派なものでした。今の東京駅を思わせるような鉄骨2階建てのレンガ造りの建物は、大正時代の街中において、ひときわ目を引いていたのではないでしょうか。
たった8年で歴史に幕を閉じた「幻の駅」
立派な駅舎を建て、東海道線がふたたび横浜駅に停車するようになってから8年ほどが経った1923年(大正12年)9月1日、二代目横浜駅は関東大震災によって消失してしまい、早くもその歴史に幕を閉じることになってしまいました。
短命に終わってしまった二代目横浜駅は、「幻の駅」と称されているようです。
当時の横浜市民にとっては、自宅や大切な人が被害にあったうえに、街の誇りだったであろう立派な駅舎も壊れてしまい、失意の中で毎日を生きていたでしょう。その時の市民の気持ちは想像しきれません。
そして今の三代目横浜駅は、震災で焼失してしまった二代目横浜駅の後を継ぐ形で1928年(昭和3年)に開業し、今日も多くの人が行き交う巨大ターミナル駅として活躍中です。
マンション建設の地中調査で見つかった遺構
二代目横浜駅があった場所には、遺構が残されています。跡地には「ロワール横浜レムナンツ」というマンションが建てられており、その敷地内の一角に遺構があるという、都会の街ならではの風景です。
マンション敷地内にありながら、横浜市市街地環境設計制度に基づく建築物の許可条件として設置されているため、この一角だけは誰でも自由に入ることができます。
高島町交差点近くにあるこの遺構は、目の前には首都高速があり、周囲もビルやマンションに囲まれているので、まさかここに遺構があると気づかない人も多いでしょう。
実は、この遺構ができたのは21世紀に入ってからなんです。2003年にマンションを建てる際に遺構が出土し、2006年になって横浜市認定歴史的建造物に認定されたとのことです。マンション建設前の地中調査によって見つけられたというのですから、驚きますね。
遺構の正式名称は「二代目横浜駅基礎等遺構(第二代横浜駅駅舎基礎遺構および横浜共同電燈会社裏高島発電所遺構)」。現地に訪れると、わずかに残るレンガとイラストから、立派なレンガ造りの駅舎だったことを彷彿させます。説明書きには、このような文章がありました。
「二代目横浜駅は大正四年八月十五日に開業され、大正十二年九月一日関東大震災のため焼失した。わずか八年という短命で、半ば『幻の駅』といわれている。
この遺構は駅舎の基礎部分にあたる。また、横浜共同電燈会社裏高島発電所の第二海水引入口の遺構もあり、二つの歴史上貴重な遺構が重なった珍しい遺構である。」
2つの遺構が重なってマンションの敷地内に残されているのは、極めて珍しいものではないでしょうか。知る人ぞ知る、貴重なスポットだということが感じられます。
散策ルートで横浜駅の歴史をたどろう
横浜市では、散策ルート「温故知新のみち」を整備しており、二代目横浜駅の遺構も含む散策ルートは「新旧東海道の温故知新のみち」の南側ルートとして紹介されています。
「新旧東海道の温故知新のみち」南側ルートは、横浜駅東口を出発し、二代目横浜駅基礎等遺構や石崎川プロムナードを通り、相鉄線西横浜駅をゴールとする約2.6kmの散策ルートです。散策ルート沿いには、総合案内サインやスポット解説サインが点在しているので、その解説に目を通しながら散策すると、より楽しめそうですね。
この散策ルートをめぐるなら、石崎川プロムナード沿いで桜が咲く春がおすすめ! ぜひカメラを片手に歩いてみてはいかがでしょうか。
同じ場所を訪れるのも、歴史を知ると味わい深いものです。高島町駅近くに行った際には、ぜひ二代目横浜駅の遺構にも足を運んでみてください。
【スポット情報】
二代目横浜駅基礎等遺構
住所: 横浜市西区高島2-1-1
ライター名 御代 貴子
プロフィール 横浜に何かと縁があるフリーライター。幼少期の夏休みは横浜の親戚の家で過ごし、大学生活も横浜で送る。現在も神奈川県在住。東北の港町で育ったせいか、海辺の街並みが好き。趣味は飲酒しながらの料理。