今の横浜駅は「3代目」だった。多くの人が行き交う巨大ターミナル駅の150年の歴史に迫る

横浜の中心的な存在のひとつが、ビッグターミナル駅である横浜駅です。1日に230万人もの人が利用し、6路線が乗り入れる巨大な駅は、通勤や通学をはじめ、多くの人に利用されています。

この横浜駅、現在の駅が「3代目」であることをご存じでしたか? 今回は、1872年(明治5年)の鉄道開業とともに、日本で最初の駅としてできた横浜駅の歴史を探ります。

6路線が乗り入れる巨大な駅

誰もが知る大きな駅である横浜駅。1日平均の乗降客数は約230万人(2019年度)、年間乗降客数は約8億4100万人にものぼり、新宿駅、渋谷駅、池袋駅、大阪・梅田駅に次いで世界5位のビックターミナル駅となっています。日本は鉄道大国で、世界の駅における乗降客数トップ20の大半を占めているんです。

また、乗り入れ路線数は日本一を誇ります。JR東日本、東急電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道、横浜市営地下鉄の6路線が利用可能です。乗り換え駅として利用する人も多く、平日も休日も、通勤や通学、買い物、旅行などさまざまな目的で訪れる人でにぎわっています。

横浜駅周辺は、最近では住みたい街(駅)としても人気急上昇中です。リクルート社のSUUMOが発表した「SUUMO住みたい街ランキング2022 首都圏版」では、吉祥寺や恵比寿といった都心の人気エリアをおさえ、横浜駅が1位に輝きました! なんと、5年連続で1位になっているとのことです。横浜は、通勤や通学、買い物だけでなく住む街としてもさらに発展しそうですね。

初代横浜駅は、桜木町駅だった!?

現在の横浜駅は、実は「3代目」なんです。2回の移転を経て、現在の地に駅舎を構えたという歴史をもちます。

初代横浜駅は、1872年(明治5年)の鉄道開業に伴い、品川駅とともに日本最初の駅として造られました。今から150年前のことです。駅舎はアメリカの建築家R.P.ブリジェンス氏による西洋建築で、貴賓室まである豪華な建物だったそうです。

駅の場所は今とは異なり、桜木町駅あたりだったとのこと。その証拠に、駅近くに鉄道発祥の地であることを示す記念碑があったり、桜木町駅の構内には駅の歴史にまつわるディスプレイがあったりもします。

また、桜木町の駅ビルCIALには「旧横ギャラリー」があり、鉄道ができた当時に走っていた110形蒸気機関車や客車、パネルやジオラマなどが展示されています。横浜の歴史や鉄道に興味がある人は、ぜひ訪れてみてくださいね。

(出典:CIAL桜木町ホームページ)

そして2代目横浜駅も、現在の横浜駅の場所ではなく、横浜市営地下鉄ブルーライン高島町駅の地にありました。建設されたのは1915年(大正4年)のことで、このときに初代横浜駅は「桜木町駅」に名前を変えたそうです。

高島町駅付近に移転した理由は、東海道線の構造にあります。東海道線を横浜駅から小田原まで延伸する際、横浜駅でスイッチバックせざるを得ず、その不便を解消するために別の「平沼駅」が作られました。東海道線は平沼駅に停車するかわりに、横浜駅は通過するようになってしまったんです。

東海道線を再び横浜駅でも停車させるために、駅を移転するという大きな決断をして生まれたのが、2代目横浜駅です。

ところが、2代目はたった8年でその歴史に幕を閉じます。1923年(大正12年)に起きた関東大震災で駅舎が壊れてしまったのです。2代目横浜駅の駅舎も、初代に劣らない立派な建物だったそうですが、短命に終わってしまいました。

3代目横浜駅は、1928年に誕生

今の横浜駅は、震災で壊れてしまった2代目の後を継ぐ形で、1928年(昭和3年)、現在の地に建設されました。

3代目横浜駅が開業した当時は、海に面した東口が表玄関となっていたそうです。第二次世界大戦での被害を免れたあと、西口の再開発が本格化し、昭和30年代前半に横浜駅名品街(現ジョイナス)と横浜高島屋がオープン。買い物客で街がにぎわうようになりました。

昭和初期に建てられた3代目横浜駅の駅舎は、わずか8年で幕を閉じた2代目とは異なり、1978年(昭和53年)までの間、長きにわたり活躍しました。

横浜駅は、こうして歴史を切り拓くとともに、時には歴史に翻弄されながら、2回の移転を経て今の場所にあるんですね。歴史を知ったうえで横浜駅を利用すると、新たな楽しみ方ができそうです。

「日本のサグラダ・ファミリア」と呼ばれることも

3代目の横浜駅は、構内や周辺で次々と開発工事が行われています。横浜駅を利用している皆さんの中には、「いつまでも工事が終わらない」と感じたことがある人もいるのではないでしょうか。

実は、1915年の2代目横浜駅の開業以来、工事計画が未だに終わっていないともいわれているそうです。そのため、100年以上にわたって未完成である共通点があるスペインのサグラダ・ファミリアにたとえて「日本のサグラダ・ファミリア」と呼ばれることもあるようです。

しかしながら2020年、横浜駅の基本的な建設工事がようやく終わり、周辺地域の開発工事を残すのみとなりました。横浜市ホームページにある「横浜駅周辺地区・エキサイトよこはま22」によると、周辺地域も含めた3代目横浜駅の完成も間近に迫っているようです。

完成した横浜駅の構内は、きれいに整備されただけでなく、構内で買い物や食事なども楽しめます。中央南改札と南改札の間のエリアには「エキュートエディション横浜」が2020年にオープンしました。食事やお茶を楽しめるほか、シェアオフィス「STATION DESK 横浜」には1人用の作業スペースがあり、急ぎの仕事をするときなどに便利です。

商業施設やオフィスビルが建設され、住宅地も整備されていく横浜駅周辺は、今後もますますにぎわうエリアとなりそうです。

【スポット情報】
横浜駅
住所: 横浜市西区
乗り入れ路線: JR東日本、東急電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道、横浜市営地下鉄

この記事を書いた人

  ライター名  御代 貴子
プロフィール 横浜に何かと縁があるフリーライター。幼少期の夏休みは横浜の親戚の家で過ごし、大学生活も横浜で送る。現在も神奈川県在住。東北の港町で育ったせいか、海辺の街並みが好き。趣味は飲酒しながらの料理。