横浜市鶴見区にある、みその公園「横溝屋敷」をご存じですか? 江戸時代の農村の屋敷構えがほぼ完全に保たれている、見学施設です。
自然あふれる環境で、当時の農村生活がわかる資料を見ることができ、四季折々のイベントも行われています。
今回は、みその公園「横溝屋敷」の歴史と、楽しみ方についてご紹介します。
地域の発展に貢献した横溝家
鶴見区獅子ヶ谷にある横溝屋敷は、みその公園の中にあります。江戸時代後期〜明治時代にこの地域の名主であり、豪農(富裕層の農家)だった横溝家のお屋敷です。
主屋・長屋門・蚕小屋・穀蔵・文庫蔵など5棟の建物があることから、横溝家の豊かさが感じられます。
横溝家は16世紀末の慶長時代から、獅子ヶ谷村(現在の鶴見区獅子ヶ谷)の名主として、地域を支えてきました。
稲作が盛んだった獅子ヶ谷村で、横溝家は鶴見川の氾濫を防ぐための治水整備を行うなど土木工事に尽力。さらに明治時代になると、高値で取引される絹や茶を地域産業にしようと、生糸や茶の生産方法を近隣に指導しました。
このように、横溝家は地域の発展に大きく貢献した名主だったのです。
古民家から知ることができる当時の暮らし
横溝屋敷は、横浜市指定有形文化財にも指定されている由緒ある建物です。横溝家から寄贈された横浜市が建物を修復し、市の指定有形文化財第一号に指定しました。
古民家を保存して活用する横浜市最初の施設として、1989(平成元)年から公開しています。
みその公園から横溝邸に向かうと、茅葺き屋根の立派な長屋門が目に飛び込んできます。長屋門は江戸末期の1847(弘化4)年に建てられたものです。
150年以上も前に建てられた門が美しく残っている姿からは、修復したうえで大切に保存されていることが感じられます。
屋敷の中に入ると、2階建ての主屋が見えてきます。この主屋は1896(明治29)年に建てられ、当時は1階を居住用、2階を養蚕に使っていたとのこと。
居室部分は広間、仏間、奥座敷、茶の間など6部屋があり、それぞれ畳や障子もきれいに保存されています。
欄間を見ると、蓮や鳥の絵柄が彫られていて、文化的にも豊かな暮らしをしていたのだろうと想像できますね。
2階に上がると、農機具や養蚕の道具類のほか、論語や歴史書などの資料が展示されています。産業に尽くし、教養もあった名主の暮らしぶりが感じられます。
この主屋には中庭もあり、四季折々の自然を楽しむことができます。
主屋を出ると、さらに蚕小屋や穀蔵、文庫蔵も見学できます。それぞれに当時使っていた道具類もあるので、見どころがたっぷりです。
その裏手にある竹林なども美しく保存されていて、お屋敷での暮らしを丸ごと感じられるのが、横溝屋敷の魅力です。
ひとつの建物だけでなく、いくつもの建築物が美しく残されているのは珍しいとのこと。見学すると、江戸後期にタイムスリップした気分を味わえると思います。
四季折々の伝統行事や稲作教室も
横溝屋敷では、年間を通して、さまざまな伝統行事のイベントが行われています。
2月は豆まき、3月はひなまつりのイベント、7月には七夕まつり折り紙教室、10月には十三夜など、親子で参加できるイベントも数多くあります。
また、5月には鯉のぼりが飾られたり、9月には竹林にあかりが灯される「竹とうろうまつり」が行われたりするなど、季節ごとの演出も見逃せません。
そして、横溝家は獅子ヶ谷の稲作に尽力したことから、毎年「五郎兵衛稲作教室」が開かれています。五郎兵衛とは、横溝家の初代名主の名前です。
この稲作教室は、6月の田おこしと田植えに始まり、7月に草取り、8月に網掛けを行い、10月の稲刈りを迎えるまで一連のお米づくりを体験できるものです。12月には収穫祭も行い、参加者どうしで豊作をお祝いします。
五郎兵衛稲作教室は、小学生とその保護者が参加できます。料金は一人3,000円。約半年間の体験学習に、親子で参加してみてはいかがでしょうか。
みその公園「横溝屋敷」は、JR横浜線・横浜市営地下鉄ブルーライン新横浜駅、JR京浜東北線鶴見駅、東急東横線大倉山駅からそれぞれバスで行くことができます。
江戸時代の暮らしぶりをたっぷり感じられる空間に、ぜひ出かけてみてください。
【スポット情報】みその公園「横溝屋敷」
- 住所:横浜市鶴見区獅子ケ谷3-10-2
- 電話::045-574-1987
- 入場料:無料
- 開館時間:9:00~16:30(主屋は10:00〜16:00)
- 休館日:第一・第三月曜(祝日の場合は翌日)、12月29日~1月3日
ライター名 御代 貴子
プロフィール 横浜に何かと縁があるフリーライター。幼少期の夏休みは横浜の親戚の家で過ごし、大学生活も横浜で送る。現在も神奈川県在住。東北の港町で育ったせいか、海辺の街並みが好き。趣味は飲酒しながらの料理。